その表情は、眼鏡の反射でほとんどうかがい知ることのできない不動産屋・伊達政一。その役を演じる高橋一生さんに、『プリンセスメゾン』の魅力、原作者・池辺葵さんへの共感を語っていただきました。
演技に余白を残して、見ている人の想像力に委ねたい。
―――高橋さんが演じられた伊達政一が持井不動産内のギャラリーを案内する姿は、伊達そのものという気がしました!

高橋 ありがとうございます。
お客様をお招きして「どうぞこちらへ」とご案内するところまで、セリフを覚えるより動作に意識を向けていました。僕がそこにいることが自然に見えるようにと思って。



―――伊達は、マンガの中であまり感情が表に出るタイプではないと思うのですが、役作りはどのようにしていったのですか?

高橋 『民王』(テレビ朝日系)で貝原役を演じたときに「無表情」と記事に載ることがよくあって。
意図してやっていたんですが。
無表情でも、表情って必ず見えてくる。
僕はそうだと思っているんです。

犬を飼ってみてわかったことなんですが、感情が出ているのが手に取るようにわかるんです。
これは飼い主のエゴじゃなくて。
笑っているとか、喜んでいるとか、怒られてへそ曲げているな、とか。
彼らは言ってしまえば、無表情で。
それでも伝わってくるんです。

人間って、表情を与えられている分だけ、その部分に頼るんですが、本当はそれだけじゃない。
もっと奥深いものだと思っていて。
『民王』のときに、大多数の人にはどう伝わっているのかなって気になっていたら「表情がある」と言ってくださる方がたくさんいて。
事務所にいただく僕宛の手紙はすべて読ませていただいているんですが「あの怒っている演技、よかったです」や「うんざりしている表情がすてきでした」と感想をいただいて。
伝わっているんだとうれしかったんです。

『プリンセスメゾン』を読ませていただいて、伊達の目がない表情を見たとき、すごく共感できました。
僕が自分だけで芝居を完結しようとしていないのと同じで、原作者の池辺葵さんも多分、伊達だけでは完結させてないんです。
読む人の想像力が入る余白を残しています。
最近の娯楽は、テレビに限らず「これは笑っているってことです」、「これは泣いているってことです」って、ガイドが入ってくる。
アクションに対してガイドが入ると、人間はどんどん考えることを失ってしまう。
だから、僕は見てくださっている方の想像力と演じる側が残す余白で、作品を完結させたいと思っています。



―――どんな役を演じるときでも“余白”を残しているんですか?

高橋 そうですね。
完璧に作り上げてしまったら、人じゃなくなるじゃないかと。
もうそれは、嘘になってしまう。
余白のないものをやろうと思えばできるんですが、あえてしないことがモットーです。
そのほうが僕の心も、見てくださっている方も豊かになれると信じてします。

―――伊達に共感する部分はありますか?

高橋 似ている部分というより、伊達に対しては憧れがあります。
彼は硬質なもので自分をカバーしているけど、中身はとてもあたたかいものが流れていて。
そんな伊達が素敵だと思いました。
伊達と沼越様の一歩引いている距離感が好き。
―――伊達は、沼ちゃんを気にしているし、助け舟を出してあげていますが、そこに恋心は入っていると思いますか?

高橋 もし、恋心があったとしても気づいていないのかもしれません。
伊達は、自分が沼越様と「お客さんと不動産屋」という関係であることを誰よりもわかっている。
だから、まさかそこに恋心があるとは思っていないんです。
男女だし、カバーしてあげているし、恋に見えなくもないですが。

―――高橋さんは、どちらの気持ちで演じているんでしょうか?

高橋 僕、個人としては、恋愛としての感覚は持っていないと思って演じています。
人間愛のほうが強いです。
彼は、沼越様との距離の縮め方が持井不動産の他のメンバーと比べるとワンテンポ遅れているんだと思います。
プロとして接しているあまり、見えなかった部分を必死に埋め合わせようとしています。
恋愛より「この人を助けてあげたい」という思いが強いと思うんです。
わからないですけど。そこから恋に転じる可能性だってあるし。



―――沼ちゃんって、みんなが助けてあげたくなるキャラクターですよね。

高橋 沼越様を見ていると、ひとりになろうとしているのがわかります。
マンションを買って、自分だけで生きていこうとする沼越さんを持井不動産のメンバーもすごいとは思っているけれど、その先に孤独とか深い闇があるかもしれないことに周りが危機感を抱いている。
「ひとりじゃないほうがいいんじゃない?」ということを無意識かもしれないですが、沼越様に伝えたいと思っているんじゃないかと。
だから他の持井不動産のメンバーは「沼ちゃん」と呼んでみたり。

人間ってひとりで生きるべきじゃないし、生きられないと思うから、
そうとしようとしている沼越様を黙って見ていられない。
ポカンと空いている穴を見てみないふりができない。



―――沼ちゃんのことをみんな心配しているんですね。

高橋 でも、それが沼越様の良さでもあって。
だから繊細に関わるのかも。
傷つけちゃうかもしれないから、仕事の相手としてのつきあいかただけのほうがいいのか、とか。
心配という親心より、人間として「平気かな?」と思う気遣い。
要さんはとくにそう。
同性というのもあっていい関係が築けていると感じます。
僕は、伊達の踏み込もうとしているけれど、プロとして一歩引いている距離感に彼らしさを感じていて、好感が持てます。
マンション購入を考える女性からは、強いエネルギーを感じます
―――森川葵さん(沼越幸役)と引っ越しの話で盛り上がったと聞きました。

高橋 僕、引っ越し魔で。
5年で10軒ぐらい引っ越しをした経験があって(笑)。
年に2、3回引っ越したかな。

―――え、そんなに!? でも、引っ越しって大変じゃないですか?

高橋 荷物が少ないので、わりとパパっと引っ越します。
住んでみて「何か違うな」って感じたら、住んでいる場所もけっこう移動します。
もともと馴染みのある場所から離れたいという気持ちもあって、引っ越すときには、区を変えたりして。
今はだいぶ落ち着いて、同じ家に3年ぐらい住んでいます。

―――今の家は、お気に入りなんですね。

高橋 僕が最初にひとり暮らしをしたいと思った24歳のときに、理想の家だなって見ていた物件なんですよ。
その時は、金銭面などの理由でまだそこには住める状況じゃなくて。
でも、ずっと気になっていたんです。
15年ぐらい同じ不動産屋さんにお願いしているんですが、その担当者の方がたまたま僕の理想の物件を持ってきてくれて。
内見もせずに決めました。
その家に犬と暮らしています。
しばらく引っ越す予定もありません。

―――犬を飼っていらっしゃるんですね!

高橋 昨年、母から引き取ったんです。
犬のためにタマネギ抜きのハンバーグを作ったりしています。
かわいがりすぎて、少し太り気味です。

―――仲良しですね(笑)。ちなみに運命とも感じるその家は、購入は考えないんですか?

高橋 購入する家ではない気がしています。
単身用の部屋の作りだと思うんで。
テラスに耐候性のあるイスとテーブルを置いて、犬と一緒にほぼずっとそこにいます。
パラソルもあって、まさに『プリンセスメゾン』に出てくる井川さんのような感じ。
外用のストーブもあって。

僕の場合、家を購入すると決めるときは犬だけじゃなくて、奥さんや子どももいるかもしれないので、部屋数は多くあったほうがいいと思っています。
作品のなかで中森先生が「将来のパートナーは住む家に合わせればいいのよ」とおっしゃっていたし、そうだとも思うんですが、僕は男性なので、結婚から、生活を長く続けると考えたとき、大きな買い物を今、したくない。
とはいえ、僕も35歳になっているので、いろいろ考えてはいるんですが。

―――独身の女性がマンションを購入することは、どう思いますか?

高橋 あるひとつのスタイルとして、いいと思います。
中森先生もおっしゃっていますが、ずっと住まなくてもいいわけで、誰かに貸してもいいですし。
そう考えると、自分のもの、所有物を持つことは大事かもしれないと思います。
ドラマの1話でも、沼越様が電気屋のおじさんに「自分のものという感覚を持つことはいい」と言われているけど、僕もそう思うんです。
所有している、なくならないものがあるという感覚は、
自信にも繋がるし、精神的な基盤にもなる。
女性がマンションを持つことは、すごく素敵なことだと思います。

―――でも、婚期が遅れるとか、強い女性に思われてしまう、とかいろいろと悩みはあると思うんですが…。

高橋 もし、マンションを持っているからって結婚相手としての対象を外してしまう男性がいるとしたら、かっこ悪いですよ。
婚期が遅れるというのだって、世間が囃し立てているからイメージがついているだけ。
想像力をまったく働かせないでそれを鵜呑みにして、自立している女性を苦しめている気がします。
沼越様だって、リアルな女性像だと思うし、よっぽど現実を見ている。
すごいエネルギーを持っているし、マンションを買おうという決断はすばらしいパワーだと思うんです。

―――高橋さんがそう言ってくれると、世の中の独身女性は心強いと思います!

高橋 大きく書いておいてくださいね。「マンションを持っている女性の婚期が遅れたりしない!」 って(笑)。



―――ありがとうございました!

構成/テキスト:中山夏美
スタイリスト:秋山貴紀



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